おもしろい本があるところ

子どもたちから「おもしろい本、おしえて!」とよく聞かれるので、ちょっくらおすすめしてみます。

ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集

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ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集

福音館書店

身近にころがっているような、なんでもない疑問ほど、

あらためて聞かれると、おや?となって、

うまく答えられないものです。

例えば、「ちゃんとした言葉」って、どういうものなのでしょう。

言葉がちゃんとするって、どういうことなのでしょう。

そんなたあいのない質問の方が、テストの問題よりもずっと難しいです。

ほとんどの人は、あまり気にとめないで暮らしています。

だけど、詩人は、そのたあいのないことが気になって、気になって、

考えに考えるのでしょう。

「詩」は、詩人がそうして考えつづけた痕(あと)なのだろうと思います。

音楽や、絵や、演劇や、小説や、

芸術と言われるようなものはどれもそうだと思います。

 

この本は、「ぼく」の視点で書かれています。

「ぼく」は詩を愛する人です。

「ぼく」が言う「きみ」は、小学生の男の子です。

その男の子は、学校の帰りだったり、お母さんのおつかいだったりで、

知り合いのおじさんである「ぼく」の家にちょくちょくやってきます。

そして、その日あったことなんかを話しながら、

ふと、これってどういうこと?

というふうに何気なく質問します。

「ぼく」は、答える代わりに、「これ、読んで」と詩を紹介します。

 

それを読みながら、大人である「ぼく」と子どもである「きみ」は、あれこれ話をして、

二人の間には、形はないけれどやわらかいものが膨らんでいく感じがします。

そして「きみ」は、なんとなく腑(ふ)に落ちたような顏になって、

爽やかに帰っていくのです。

 

詩を読むのが好きな人も、

詩ってよく分からないなぁという人も、

この本のことを覚えておいてほしいです。

そして、いつか気が向いたときに読んでもらいたいなぁと思います。

もちろん、今すぐに読んでもかまわないのですが…。