おもしろい本があるところ

子どもたちから「おもしろい本、おしえて!」とよく聞かれるので、ちょっくらおすすめしてみます。

カカ・ムラドーナカムラのおじさん

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カカ・ムラドーナカムラのおじさん(双葉社

2019年12月4日、中村哲(なかむらてつ)さんが支援先(しえんさき)のアフガニスタン

銃(じゅう)で撃(う)たれ亡(な)くなりました。

この本は、アフガニスタン中村哲さんのことを語り継ぐために出版された2冊の絵本と、

中村さんの功績(こうせき)についての解説(かいせつ)で出来ています。

 

中村哲さんは、医師(いし)です。

だから、初めのうち中村さんは、

他の医師がするように、診療所(しんりょうじょ)で病気の治療(ちりょう)をしていました。

しかし、病気の人は減(へ)るどころか増える一方でした。

なかには、診療を待っている間に赤ちゃんが死んでしまうこともありました。

中村さんは、治療(ちりょう)どころではないと感じました。

そして、まず原因を突き止めて、

それから、人々が健康に暮らせるようにするしかないと考えました。

そこで、地道(じみち)に調査(ちょうさ)をして出した結論(けつろん)は、

きれいな水を確保(かくほ)することでした。

そのためには、大きな川の上流の方からきれいな水を持ってくる用水路が必要でした。

中村さんは、そのことをていねいに村の人たちに説明しました。

長年、謎(なぞ)の病気に苦しんできた村の人たちは、

熱心に話を聞き、中村さんを信じ、多くの人たちが協力をしました。

用水路をひくなんて、まったく経験のない中村さんでしたが、

それからは、そのことについて一生懸命(いっしょうけんめい)勉強をし、

体を動かし、働きました。村の人たちも、一生懸命それを助けました。

そうやって、6年もの歳月(さいげつ)をかけて用水路は完成しました。

 

34、35ページの見開きにある写真を見比べてください。

以前は、「死の谷」と呼ばれるほど枯(か)れた砂漠地帯(さばくちたい)だったのが、

用水路が通ったことで緑があふれ、畑が広がっているのが分かります。

きれいな水があることで、飲み水の確保だけでなく、植物も育つ大地になるのです。

つまり、農業ができるということです。

それは、仕事があり、収入が入るということです。

以前は、収入がないので、生活費を稼ぐために軍に入ることも多かったのですが、

農業でお金が入れば、その必要はありません。

誰だって、戦争よりも平和がいいに決まっています。

きれいな水があって、家族がみんな当たり前に食べていけることで、

健康が保たれ、病気の人は減っていきます。

このなんでもないような当たり前のことが、

その中にいると気がつかないのかもしれません。

このことに気付いて、とても難しいことだったのに、

信念(しんねん)をもって行動にうつした中村さんはすごい人です。

 

中村さんは言います。

どんな困難(こんなん)にぶつかった時も、

まず最初に自分の心でよく考えてから努力すること。

それでもだめならひとりきりではなく、大切な誰かに相談(そうだん)すること。

と。

「ほんとうのやさしさ」と「知恵(ちえ)」が

どれほど力をもっているかを教えてくれる本です。

ぜひ、自分でも読んでほしいです。

 

 

カカ・ムラド~ナカムラのおじさん

カカ・ムラド~ナカムラのおじさん

  • 作者:ガフワラ
  • 発売日: 2020/12/02
  • メディア: 単行本